現在、私は副業で「要約筆記奉仕員」として活動中です。要約筆記の派遣では報償費をいただいています。要約筆記でいただいている報償費の実態について、要約筆記の年収はいくらになるか、また要約筆記者になるにはどのようにしたらいいかなどについてお話しします。
要約筆記とは、話し手の話の内容をつかみ、それを文字にして伝える、聴覚障害者のためのコミュニケーションの保障です。1960年代に考案され、現在は手話通訳と同様に福祉サービスとして行われています。
全国要約筆記問題研究会(全要研)
要約筆記者の年収
一般公開されている要約筆記の年収
一般的に年収は300万円~500万円だと言われています。これは企業で仕事として要約筆記を行っている場合か、個人でも報償費が高くて派遣回数が多い自治体だと思われます。
私が登録している自治体の場合
令和4年度の収入合計は、26、767円です。
私の自治体では、自宅での前ロール作成時間、自宅から派遣会場までの移動時間、会場での打ち合わせ時間や準備時間も活動時間に含まれます。
◉要約筆記奉仕員(1時間1,000円)
要約筆記奉仕員の報償費は1時間1,000円です。令和4年度は派遣依頼が22回あり、内7回に行き、合計26,767円でした。
1回3,824円で、22回すべて活動した場合、合計84,128円となります。
◉要約筆記者(1時間1,500円)
要約筆記者の報償費は1時間1,500円となり、同じ活動時間(7回)だとすると合計39,100円になります。
1回5,585円で、22回すべて活動した場合、合計で122,870円となります。
要約筆記の年収(報償費の1年間の合計)は、26,767円で、要約筆記だけで生活出来るような金額ではありません。あくまでも副業としてやりがいをもって活動しています。
東京都の場合
「東京手話通訳等派遣センター」について調べてみました。
報償費は「1時間まで6,500円、以後1時間ごとに4,000円を加算」ということで、私が登録している自治体よりも4倍以上も多いです。
仮に派遣7回で、活動時間が4時間の場合、年収で129,500円。22回の派遣で、407、000円になります。
横浜市「障害者スポーツ文化センター 横浜ラポール」の場合
報酬額や交通費は、主催者が通訳者個人に直接支払うものとされています。
要約筆記者1人あたりの報酬額
時間帯 | 手書き通訳 | パソコン通訳 |
1時間以下 | 4,992円 | 5,492円 |
1時間超過~1時間30分以下 | 5,824円 | 6,324円 |
1時間30分超過~2時間以下 | 6,656円 | 7,156円 |
2時間超過~2時間30分以下 | 7,488円 | 7,988円 |
2時間30分超過~3時間以下 | 8,320円 | 8,820円 |
3時間超過~3時間30分以下 | 9,152円 | 9,652円 |
3時間30分超過~4時間以下 | 9,984円 | 10,484円 |
なぜ自治体によって報償費が違うのか
「障害者総合支援法の地域生活支援事業は国の裁量的経費である補助金事業なので、一定額が超えた分については都道府県・市町村等の自治体が負担しなければならない。」ということです。
つまり、財政が多い自治体と少ない自治体で差があるからです。
要約筆記事業は、障害者総合支援法の地域生活支援事業になっています。
要約筆記派遣が活発な自治体があったり、ほとんど活動していない自治体もあり様々です。
要約筆記の収入は非課税
「要約筆記の報酬は、源泉徴収の対象となる通訳、速記等の所得税法第204条第1項各号に掲げる報酬・料金のいずれにも該当しませんので、源泉徴収をする必要はありません。」ということです。手話通訳者も同様です。
詳細については、国税庁のサイトをご覧ください。
要約筆記者になるには
要約筆記者になるためには、まず「要約筆記者養成講座」を受講します。受講後に「要約筆記奉仕員」として活動を開始することができます。
その後2月に行われる「全国統一要約筆記者認定試験」に合格すると「要約筆記者」として登録し活動することが出来ます。
要約筆記者養成講座
各都道府県・市町村等において、厚生労働省要約筆記者養成カリキュラム基づいて実施される「要約筆記者養成講座」を受講します。
養成講座は、「手書き要約筆記」と「パソコン要約筆記」の2種類のコースに分かれます。
受講料は無料ですが、テキスト代は自己負担4,000円です。(自治体によって異なる場合があります。)
令和6年度の東京都の要約筆記者養成講座の募集要項
全国の要約筆記者養成講座について
全国の要約筆記者養成講座の申込先を調査しています。お住まいの都道府県に申込みをします。
全国統一要約筆記者認定試験
講座を修了後、2月に開催される試験に合格すると「要約筆記者」となります。
受験者数と合格率について
筆記試験の問題が難しくなってきていて、要約筆記試験の合格率が下がっています。
同じ問題は出ない傾向にあるため、過去問だけを勉強しても合格出来ません。テキスト中心の勉強が必要だと感じています。
認定基準・採点基準の変更
「一般社団法人 要約筆記者認定協会」から「2024年度(2025年2月試験)より要約筆記者認定基準・採点基準を変更します。」と発表されました。
■2023年度(2024年2月試験)までの認定基準
筆記試験120点以上、かつ実技試験70点以上
■2024年度(2025年2月試験)からの認定基準
次の1,2を満たしていること
1.筆記試験結果が次の①②を満たしていること
①合計得点が120点(60%)以上
②出題分野の得点が次にあげる各分野の配点の25%以上
聴覚障害者の基礎知識 50点
社会福祉の基礎知識 50点
要約筆記の基礎知識 50点
要約筆記の基礎知識対応力 20点
日本語の基礎知識 50点
2.実技試験各70点以上(変更なし)
要約筆記者認定試験対策
要約筆記の実態
要約筆記はどのようにして行われているか、要約筆記を体験した人の感想など。
こちらも合わせてご覧ください。
まとめ
要約筆記者の収入
個人が活動する際、登録している自治体によって報償費は異なります。(例:1時間あたり1,000円から6,500円)。
年収も数万円から数百万円と幅があります。
一般に公開されている年収の300万円から500万円というのは、企業で要約筆記者として働いているか、報償費が高くて派遣回数が多い自治体だと考えられます。
要約筆記の収入は非課税
要約筆記の報酬は、源泉徴収の対象となる通訳、速記等の所得税法第204条第1項各号に掲げる報酬・料金のいずれにも該当しませんので、源泉徴収をする必要はありません。(手話通訳者も同様です)
要約筆記者になるには
厚生労働省要約筆記者養成カリキュラム基づいて実施される「要約筆記者養成講座」を受講します。
講座修了後、自治体に登録して「要約筆記奉仕員」として活動することも出来ます。
講座を修了した翌年の2月に開催される「全国統一要約筆記者認定試験」に合格すると「要約筆記者」となります。